映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』感想|正直、普通に面白かったPTA作品

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ディカプリオ主演、監督はポール・トーマス・アンダーソン。
この組み合わせを見た瞬間「これは絶対映画館で観るべき映画!」とワクワクしました。

観てみると想像以上にエンタメ感たっぷりで、素直に「面白かった!」と思えた作品です。ディカプリオのダメ父っぷりや、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロの個性的なキャラクターも魅力的で、笑える場面とシリアスな場面のバランスも絶妙。

私はIMAXで観ましたが、スクリーンいっぱいの映像と迫力ある音響で162分があっという間でした。この記事では前半はネタバレなし、後半は少し踏み込んだネタバレありの感想を書いています。気軽に読んでもらえたらうれしいです。

目次

『ワン・バトル・アフター・アナザー』ってどんな映画?

ワン・バトル・アフター・アナザーのポスター
シリアスな状況なのに、なぜか間がゆるい。この映画らしい一幕。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、一言で言うと「戦いがなかなか終わらない男の話」。

ポール・トーマス・アンダーソン監督×レオナルド・ディカプリオ主演、という時点で、正直ちょっと身構えました。タイトルも重そうだし、「これは気合い入れて観るやつかな…」と思ったんですが、実際に観てみると、意外とエンタメ感が強くて、そこまで難しく考えなくても楽しめる作品でした。

物語の中心にいるのは、レオナルド・ディカプリオ演じるボブ。かつては革命家、今はちょっとダメなお父さん。追い詰められながらも必死に動く姿が、妙に人間くさくて、気づくと目で追ってしまいます。

重たいテーマはありつつも、ずっと張りつめた空気が続くわけではなく、ところどころ「今の、ちょっと笑っていいやつだよね?」みたいな場面が挟まるのも、この映画の好きなところ。

「PTA作品って難しそう…」と敬遠していた人ほど、思っていたよりスッと観られる一本かもしれません。

作品データ

ワン・バトル・アフター・アナザー
公開日2025年10月3日
制作国アメリカ
監督ポール・トーマス・アンダーソン
主演レオナルド・ディカプリオ

キャスト&役名

キャスト役名
レオナルド・ディカプリオボブ・ファーガソン
ショーン・ペンスティーブン・J・ロックジョー大佐
チェイス・インフィニティウィラ・ファーガソン
ベニチオ・デル・トロセルヒオ・セント・カルロス
テヤナ・テイラーパーフィディア・ビバリーヒルズ
レジーナ・ホールデアンドラ

IMAXで味わう圧倒的な映像体験

ポール・トーマス・アンダーソン監督作品としては、本作が初のIMAX公開。ビスタビジョンで撮影された映像は、一部の劇場ではIMAX史上初となる、全編1.43:1の拡張アスペクト比で上映されました。

ちょっと専門的な話になりますが、実際にIMAXで観ると、その違いはかなり分かりやすいです。スクリーンいっぱいに映像が広がって、アクションの迫力はもちろん、登場人物の細かな表情までくっきり。

私もIMAXで鑑賞しましたが、「ホント、これは映画館で観れてよかった!」と素直に思える体験でした。物語にぐっと引き込まれる感じがあって、162分という上映時間もそこまで長く感じなかったです。

Amio

本作は、トマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』から着想を得たそうです。原作の設定やテーマが、かなりゆるめに映画に反映されている印象。PTA監督×ピンチョン、この組み合わせだけで、なんだか惹かれますね。

【ネタバレなし】正直な感想

ロック・ジョー(ショーン・ペン)の異様な存在感と、パーフィディア(テヤナ・テイラー)の冷えた視線。

まずはネタバレなしで、観終わって感じた正直な感想から書いています。

思っていたより、ずっと楽しめたPTA作品

ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品って、どうしても「重たい」「難解」「じっくり向き合わないと…」ってイメージがあったんですよね。でも『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、その予想をいい意味で裏切ってくれました。

アクションは派手だし、テンポも良くて、シリアスなテーマを扱いながらも、肩の力を抜いて観られるんです。特に印象的だったのは、「この映画って何を描きたいんだろう?」なんて考える前に、まず物語として単純に面白いって感じられたこと。

革命や追跡、親子の逃亡劇…設定だけ見ると重くなりそうなのに、登場人物たちのどこか抜けた感じやクスッと笑えるやり取りがうまく挟まっていて、気づけば最後まで引き込まれていました。

難解さよりも娯楽性が前に出ていて、「PTA作品って苦手かも…」と思っている人でも、意外とスッと楽しめる一本かもしれません。個人的には、こういう軽やかな楽しさを感じられるPTA作品って新鮮でした。

レオナルド・ディカプリオが演じる“ダメ父”の魅力

この映画を観て、まず強く印象に残ったのは、やっぱりレオナルド・ディカプリオの存在感でした。ボブという人物は、かつては革命家として名を馳せた過去を持ちながら、今は酒に溺れ、判断もどこか鈍くて、正直「頼りになる父親」とは言いがたい存在です。

でも、不思議と嫌いになれない。むしろ、目が離せなくなってしまう。それはたぶん、ディカプリオがこの“ダメさ”を格好つけずに、ちゃんとさらけ出しているからなんですよね。娘ウィラの前で強がろうとするけれど、実際には追い詰められていて、どうすればいいかわからなくなっている感じ。

ヒーローでも救世主でもなく、ただの不器用な父親としてそこに立っている。このボブという役、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『レヴェナント』のような圧倒的なカリスマや執念とは、また全然違うタイプで、ディカプリオのキャリアの中でもかなり“力を抜いた芝居”に見えました。

でも、その力の抜け方がすごくいい。情けないところも、ズルいところも、それでも娘だけは守ろうとするところも、全部が混ざり合って、「この人、現実にいそうだな」と思わせてくれる。完璧じゃない大人が、それでも何かを守ろうとする姿って、年齢を重ねてから観ると、若い頃よりずっと刺さる気がします。

ディカプリオが演じたからこそ、ボブというキャラクターはただの“ダメ父”で終わらず、どこか愛おしい存在になった。そんなふうに感じました。

思わず笑ったお気に入りシーン

必死なのに、ちょっと笑えてしまう。

この映画、全体的に緊張感のある展開が続くんですが、ところどころに「え、ここ笑っていいやつ?」って瞬間があって、そのバランスがすごく心地よかったです。

中でも一番印象に残ったのは、ボブが公衆電話で、暗号を思い出せずキレるシーン。落ち合うための暗号なのに、途中までは覚えているのに最後が出てこなくて、電話越しの相手も困惑、ボブ本人はだんだんキレ始める…必死さが逆に可笑しくて、思わず笑っちゃいました。

でも、このシーンはただのギャグじゃなくて、かつて革命家だったボブが、今は完璧なヒーローじゃないことを端的に表している気がします。

昔の仲間との“合言葉”を思い出せないのも象徴的で、理想や信念を掲げていた過去と、ボロボロになりながら娘を守ろうとする今の姿が、その電話一本にぎゅっと詰まっている感じ。笑えてちょっと切ない、この絶妙なバランスがPTAらしいなぁと思わせてくれるシーンです。

※ここからネタバレあり(ご注意ください)

ウィラ(チェイス・インフィニティ)の表情が、この物語の重さを静かに伝えてくる。

ここからはネタバレを含みますので、まだ観ていない方はご注意を!
映画の物語に少し触れつつ、ネタバレありで感想を書いています。

ざっくりあらすじ

物語の舞台は、荒廃したアメリカ。かつて “フレンチ75” という革命組織が、権力に立ち向かっていた時代から物語は始まります。主人公ボブ(レオナルド・ディカプリオ)は、昔は革命家として名を馳せた人物

でも今は、酒や薬に頼りながら、娘ウィラとなんとか暮らしている、ちょっと頼りない父親です。そんなボブの前に、過去の因縁や危険な人物たちが次々と現れ、気づけばまた、逃げるような日々に巻き込まれていきます。とはいえ、この映画はアクションやサスペンス一辺倒ではありません。

逃亡劇の中で描かれるのは、親子の距離感や、仲間との関係、そして「過去はそう簡単に手放せない」という感情の部分。完璧とはほど遠いボブと、そんな父を見捨てきれない娘ウィラ。この二人の関係があるからこそ、物語は重くなりすぎず、162分という上映時間も、思ったよりあっという間に感じられました。

ボブという主人公の人間くささ

ボブは、いわゆる「強い主人公」ではありません。判断を間違えたり、感情的になったりして、見ていて少し頼りなく感じる場面も多いです。でも、その不完全さが、この映画の居心地のよさにつながっている気がしました。

何か大きな使命を背負ったヒーローというより、流れに振り回されながら、なんとか踏ん張っている人。そんな印象です。だからこそ、暗号を思い出せずにキレてしまうシーンも、どこか笑えてしまうし、妙にリアル。

完璧に立ち回れないから、観ているこちらも肩の力を抜いて見守れるんですよね。「うまくいかない人の話」として、自然に入り込めたのは、この人間くささがあったからだと思います。

もしボブがもっと有能で完璧な人物だったら、物語はきっと、今より重くてしんどいものになっていたはず。そう考えると、ボブというキャラクターは、この映画にちょうどいい温度を与えてくれる存在でした。

父と娘の逃亡劇と“終わらない戦い”

この映画の軸にあるのは、ボブ(ディカプリオ)と娘ウィラの逃亡劇です。かつて革命家だったボブは、今では決して頼れる完璧な父親とは言えません。

どちらかというと、不器用で、見ていてハラハラするタイプ。それでも、娘を守ろうとする気持ちだけは一貫していて、その姿がどこか人間くさくて、私は嫌いになれませんでした。

追いかけてくる敵たちも、いかにもな“悪役”というより、過去の因縁や執着を引きずった存在として描かれていて、物語の緊張感をずっと保っています。逃げても逃げても、なかなか安心できない。この感じが、まさに「終わらない戦い」なんですよね。

タイトルにある“戦い”は、派手なアクションだけではなくて、過去の選択や後悔、信じて裏切られた記憶。そういった心の中の戦いも含まれているんだろうな、と観ながら感じました。笑える場面もちゃんとありつつ、父と娘の関係や、「過去は簡単に消えてくれない」という感覚が、じわっと残る映画でもあります。

162分と聞くと少し長く感じますが、アクションとドラマのバランスがよくて、私は最後までそれほどダレずに観られました。観終わったあとに残ったのは、深く考えすぎなくても、「普通に面白かったな」という素直な気持ち。それで十分だな、と思える一本でした。

まとめ|普通に面白かった、それで十分

出てくるだけで空気が変わる人。ベニチオ・デル・トロの“センセイ”、やっぱり只者じゃない。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、難しく考えなくても素直に楽しめる映画でした。

162分と少し長めですが、テンポのいいアクションに親子のドラマ、ほどよいユーモアもあって、体感的にはあっという間。「PTA作品だから構えて観なきゃ…」と思っていましたが、そんな心配はいらなかったな、というのが正直なところです。

ディカプリオ演じる人間くさいボブや、個性あふれるキャストに自然と引き込まれて、気づけば単純に「面白かったな」と思えていました。深読みしなくても楽しめて、でも父娘の関係にはじんわり余韻が残る。

観終わったあとに、「この映画を選んでよかったな」と思える一本です。

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