映画好きなら絶対気になる、アカデミー賞の監督賞。この記事では、第1回(1929年)から第97回(2025年)までの受賞監督とその代表作をざっくりまとめてみました。
年代ごとに振り返ると、映画史の流れやその時代のトレンドも自然と見えてきます。一覧形式だから、気になる年や名監督もサクッとチェック可能。映画史を楽しみながら追える、完全保存版まとめです!
アカデミー賞監督賞とは?
アカデミー賞の監督賞は、映画監督に贈られる最高の栄誉。監督の手腕が映画の完成度を大きく左右することから、演出や演技指導、映像表現まで幅広く評価されます。
第1回が行われた1929年以来、映画史に名を残す巨匠たちがこの賞を受賞してきました。スピルバーグやコッポラ、キャメロン、イーストウッド…名監督たちの腕前が光る賞として、映画ファンなら見逃せない存在です。
歴代の受賞監督を年代ごとに紹介
アカデミー賞監督賞の受賞者を年代ごとに見ていくと、その時代ごとに映画界のトレンドやテーマが見えてきます。
戦争を背景にしたドラマが支持された時代もあれば、新しい映像表現に挑んだ監督が脚光を浴びた時代もありました。
ここからは、映画史を彩った名監督と受賞作を年代別に振り返っていきましょう。
1950年代は、ハリウッドの黄金期を象徴する時代。西部劇や歴史劇、クラシックな大作が観客に愛されました。
- ジョン・フォード(『静かなる男』)
西部劇の名匠として知られる巨匠。人間ドラマにも定評あり。 - デヴィッド・リーン(『戦場にかける橋』)
壮大なスケールの映像美で観客を圧倒。 - ヴィンセント・ミネリ(『恋の手ほどき』)
ミュージカル映画の華やかさを世界に広めた人物。
アメリカン・ニューシネマが全盛を迎え、社会の混乱や人間のリアルな姿を描く作品が高く評価されました。

- フランシス・フォード・コッポラ(『ゴッドファーザー PART II』)
ギャング映画の枠を超えた人間ドラマを構築。 - マイケル・チミノ(『ディア・ハンター』)
ベトナム戦争の傷跡を重く描いた社会派大作。 - ウディ・アレン(『アニー・ホール』)
恋愛映画を知的かつユーモラスに描いた独自の作風で受賞。
90年代はハリウッドの大作と社会派作品がバランスよく評価され、国際的なヒットも続出しました。

- スティーブン・スピルバーグ(『シンドラーのリスト』)
歴史の重みを真正面から描き、キャリアを代表する一本に。 - ジェームズ・キャメロン(『タイタニック』)
世界的な大ヒットとともに監督賞も獲得。 - アンソニー・ミンゲラ(『イングリッシュ・ペイシェント』)
ロマンティックで壮大な歴史ドラマを映像化。
この時代は、デジタル技術の進化とともに映画表現が大きく広がりました。大作から小規模映画まで幅広く受賞。

- ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』)
ファンタジーを映画史に残るスケールで映像化。 - クリント・イーストウッド(『ミリオンダラー・ベイビー』)
重厚な人間ドラマを描き、監督としての評価を決定づけた。 - ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)
インドを舞台にした斬新な青春ドラマで世界を驚かせた。
近年は女性監督や国際的な監督の受賞が増え、ハリウッドの枠を超えた時代へ。

- キャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)
女性として初の監督賞受賞。戦争映画の新たな可能性を示した。 - アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』、『ROMA/ローマ』)
映像革新と個人的な物語を融合。 - ギレルモ・デル・トロ(『シェイプ・オブ・ウォーター』)
ダークファンタジーでオスカーを制覇。 - ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)
韓国映画として初めての快挙。格差社会を描いた名作で世界を席巻。
監督賞受賞者リスト(年代別)
映画の歴史を語るうえで欠かせないのがアカデミー賞の「監督賞」。その時代を代表する作品と監督がズラリと並ぶ、まさに映画史の見取り図みたいな存在です。
ここでは第1回から最新まで、受賞監督と作品を年代ごとに整理しました。表を眺めるだけでも、映画の流れやトレンドの変化が一目でわかるはず。映画好きにはたまらない “永久保存版リスト” です!
1920〜1940年代(第1〜22回)
映画が “トーキー” になった時代から黄金期のハリウッドまで、この時代は名作が次々と生まれた激動の20年間。巨匠たちの名前がズラリと並んでいます。
回(開催年度) | 受賞監督 | 作品タイトル |
---|---|---|
第1回(1929) | フランク・ボーゼージ | 『第七天国』 |
ルイス・マイルストン | 『美人国二人行脚』 | |
第2回(1930) | フランク・ロイド | 『情炎の美姫』 |
第3回(1930) | ルイス・マイルストン | 『西部戦線異状なし』 |
第4回(1931) | ノーマン・タウログ | 『スキピイ』 |
第5回(1932) | フランク・ボーゼージ | 『バッド・ガール』 |
第6回(1934) | フランク・ロイド | 『カヴァルケード』 |
第7回(1935) | フランク・キャプラ | 『或る夜の出来事』 |
第8回(1936) | ジョン・フォード | 『男の敵』 |
第9回(1937) | フランク・キャプラ | 『オペラハット』 |
第10回(1938) | レオ・マッケリー | 『新婚道中記』 |
第11回(1939) | フランク・キャプラ | 『我が家の楽園』 |
第12回(1940) | ヴィクター・フレミング | 『風と共に去りぬ』 |
第13回(1941) | ジョン・フォード | 『怒りの葡萄』 |
第14回(1942) | ジョン・フォード | 『わが谷は緑なりき』 |
第15回(1943) | ウィリアム・ワイラー | 『ミニヴァー夫人』 |
第16回(1944) | マイケル・カーティス | 『カサブランカ』 |
第17回(1945) | レオ・マッケリー | 『我が道を往く』 |
第18回(1946) | ビリー・ワイルダー | 『失われた週末』 |
第19回(1947) | ウィリアム・ワイラー | 『我等の生涯の最良の年』 |
第20回(1948) | エリア・カザン | 『紳士協定』 |
第21回(1949) | ジョン・ヒューストン | 『黄金』 |
第22回(1950) | ジョセフ・L・マンキーウィッツ | 『三人の妻への手紙』 |

表を見てみると、フランク・キャプラ、ジョン・フォード、ウィリアム・ワイラーといった巨匠が何度も登場してるのが、この時代の特徴ですね。
※ 第1回は1927年8月1日〜28年7月31日の1年間に公開された作品が対象。第6回のみ1932年8月1日〜12月31日の公開作品が対象。第7回から1月1日〜12月31日の公開作品が対象。
1950〜1970年代(第23〜52回)
映画黄金期からニューシネマの台頭まで、ハリウッドの変化を映し出す時代。この頃のアカデミー賞監督賞は、巨匠と呼ばれる名監督たちがずらりと並んでいます。
回(開催年度) | 受賞監督 | 作品タイトル |
---|---|---|
第23回(1951) | ジョセフ・L・マンキーウィッツ | 『イヴの総て』 |
第24回(1952) | ジョージ・スティーヴンス | 『陽のあたる場所』 |
第25回(1953) | ジョン・フォード | 『静かなる男』 |
第26回(1954) | フレッド・ジンネマン | 『地上より永遠に』 |
第27回(1955) | エリア・カザン | 『波止場』 |
第28回(1956) | デルバート・マン | 『マーティ』 |
第29回(1957) | ジョージ・スティーヴンス | 『ジャイアンツ』 |
第30回(1958) | デヴィッド・リーン | 『戦場にかける橋』 |
第31回(1959) | ヴィンセント・ミネリ | 『恋の手ほどき』 |
第32回(1960) | ウィリアム・ワイラー | 『ベン・ハー』 |
第33回(1961) | ビリー・ワイルダー | 『アパートの鍵貸します』 |
第34回(1962) | ロバート・ワイズ/ジェローム・ロビンズ | 『ウエスト・サイド物語』 |
第35回(1963) | デヴィッド・リーン | 『アラビアのロレンス』 |
第36回(1964) | トニー・リチャードソン | 『トム・ジョーンズの華麗な冒険』 |
第37回(1965) | ジョージ・キューカー | 『マイ・フェア・レディ』 |
第38回(1966) | ロバート・ワイズ | 『サウンド・オブ・ミュージック』 |
第39回(1967) | フレッド・ジンネマン | 『わが命つきるとも』 |
第40回(1968) | マイク・ニコルズ | 『卒業』 |
第41回(1969) | キャロル・リード | 『オリバー!』 |
第42回(1970) | ジョン・シュレシンジャー | 『真夜中のカーボーイ』 |
第43回(1971) | フランクリン・J・シャフナー | 『パットン大戦車軍団』 |
第44回(1972) | ウィリアム・フリードキン | 『フレンチ・コネクション』 |
第45回(1973) | ボブ・フォッシー | 『キャバレー』 |
第46回(1974) | ジョージ・ロイ・ヒル | 『スティング』 |
第47回(1975) | フランシス・フォード・コッポラ | 『ゴッドファーザーPART II』 |
第48回(1976) | ミロス・フォアマン | 『カッコーの巣の上で』 |
第49回(1977) | ジョン・G・アヴィルドセン | 『ロッキー』 |
第50回(1978) | ウディ・アレン | 『アニー・ホール』 |
第51回(1979) | マイケル・チミノ | 『ディア・ハンター』 |
第52回(1980) | ロバート・ベントン | 『クレイマー、クレイマー』 |
1980〜2000年代(第53〜82回)
1980年代から2000年代にかけては、名匠たちの円熟期と新しい才能の登場が入り混じった時代。
スピルバーグやイーストウッドのような大御所に加えて、アメリカ映画界に新風を吹き込んだ監督たちも次々と登場しました。
回(開催年度) | 受賞監督 | 作品タイトル |
---|---|---|
第53回(1981) | ロバート・レッドフォード | 『普通の人々』 |
第54回(1982) | ウォーレン・ベイティ | 『レッズ』 |
第55回(1983) | リチャード・アッテンボロー | 『ガンジー』 |
第56回(1984) | ジェームズ・L・ブルックス | 『愛と追憶の日々』 |
第57回(1985) | ミロス・フォアマン | 『アマデウス』 |
第58回(1986) | シドニー・ポラック | 『愛と哀しみの果て』 |
第59回(1987) | オリヴァー・ストーン | 『プラトーン』 |
第60回(1988) | ベルナルド・ベルトルッチ | 『ラストエンペラー』 |
第61回(1989) | バリー・レヴィンソン | 『レインマン』 |
第62回(1990) | オリヴァー・ストーン | 『7月4日に生まれて』 |
第63回(1991) | ケヴィン・コスナー | 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』 |
第64回(1992) | ジョナサン・デミ | 『羊たちの沈黙』 |
第65回(1993) | クリント・イーストウッド | 『許されざる者』 |
第66回(1994) | スティーヴン・スピルバーグ | 『シンドラーのリスト』 |
第67回(1995) | ロバート・ゼメキス | 『フォレスト・ガンプ 一期一会』 |
第68回(1996) | メル・ギブソン | 『ブレイブハート』 |
第69回(1997) | アンソニー・ミンゲラ | 『イングリッシュ・ペイシェント』 |
第70回(1998) | ジェームズ・キャメロン | 『タイタニック』 |
第71回(1999) | スティーヴン・スピルバーグ | 『プライベート・ライアン』 |
第72回(2000) | サム・メンデス | 『アメリカン・ビューティー』 |
第73回(2001) | スティーヴン・ソダーバーグ | 『トラフィック』 |
第74回(2002) | ロン・ハワード | 『ビューティフル・マインド』 |
第75回(2003) | ロマン・ポランスキー | 『戦場のピアニスト』 |
第76回(2004) | ピーター・ジャクソン | 『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』 |
第77回(2005) | クリント・イーストウッド | 『ミリオンダラー・ベイビー』 |
第78回(2006) | アン・リー | 『ブロークバック・マウンテン』 |
第79回(2007) | マーティン・スコセッシ | 『ディパーテッド』 |
第80回(2008) | ジョエル&イーサン・コーエン | 『ノーカントリー』 |
第81回(2009) | ダニー・ボイル | 『スラムドッグ$ミリオネア』 |
第82回(2010) | キャスリン・ビグロー | 『ハート・ロッカー』 |



やっぱりこの時代はすごい!スピルバーグにキャメロン、イーストウッドまで…映画好きならワクワクしちゃう顔ぶれ!
2010年代以降(第83〜97回)
2010年代以降は、多様性や国際的な才能が注目される時代。女性監督や非アメリカ出身監督も受賞するようになり、映画のテーマや表現の幅もぐっと広がっています。
回(開催年度) | 受賞監督 | 作品タイトル |
---|---|---|
第83回(2011) | トム・フーパー | 『英国王のスピーチ』 |
第84回(2012) | ミシェル・アザナヴィシウス | 『アーティスト』 |
第85回(2013) | アン・リー | 『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』 |
第86回(2014) | アルフォンソ・キュアロン | 『ゼロ・グラビティ』 |
第87回(2015) | アレハンドロ・G・イニャリトゥ | 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 |
第88回(2016) | アレハンドロ・G・イニャリトゥ | 『レヴェナント: 蘇えりし者』 |
第89回(2017) | デイミアン・チャゼル | 『ラ・ラ・ランド』 |
第90回(2018) | ギレルモ・デル・トロ | 『シェイプ・オブ・ウォーター』 |
第91回(2019) | アルフォンソ・キュアロン | 『ROMA ローマ』 |
第92回(2020) | ボン・ジュノ | 『パラサイト 半地下の家族』 |
第93回(2021) | クロエ・ジャオ | 『ノマドランド』 |
第94回(2022) | ジェーン・カンピオン | 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 |
第95回(2023) | ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート | 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 |
第96回(2024) | クリストファー・ノーラン | 『オッペンハイマー』 |
第97回(2025) | ショーン・ベイカー | 『ANORA アノーラ』 |
まとめ|監督賞から映画の流れを楽しもう
アカデミー賞の監督賞を振り返ると、映画史の流れが自然と見えてきます。時代ごとに求められるテーマや映像表現があり、名監督たちの挑戦や新しい才能の登場が感じられます。
1920〜40年代の黄金期、50〜70年代の巨匠たち、80〜2000年代の大作と社会派作品、そして2010年代以降の多様性と国際化。
監督賞を追うことで、映画の変化や進化を簡単に理解できます。これからも新しい監督や作品がどんな物語を届けてくれるのか、楽しみにしたいですね。



筆者の推し監督は…
クリストファー・ノーラン監督です。『インセプション』や『ダークナイト』の緻密な構成と壮大な映像美には、何度見ても圧倒されます。