【アカデミー賞ノミネート】『ブゴニア』ネタバレなしレビュー|見どころ&感想まとめ

出典:(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

来月のアカデミー賞に向けて、ノミネート作品を少しずつ鑑賞中。今回は『ブゴニア』を観てきました。ヨルゴス・ランティモス監督らしい独特の世界観と、思わず息をのむ映像美が印象的な一本。

俳優陣の緊張感ある演技や音楽の使い方も含めて、映画館でこそ体感したい作品だと感じました。

今回はその見どころと感想を、映画好き目線でまとめていきます。

目次

『ブゴニア』ってどんな映画?

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『ブゴニア』は、独特すぎる世界観で知られるヨルゴス・ランティモス監督の最新作。『ミッドサマー』で知られるアリ・アスターがプロデューサーに名を連ね、2003年の韓国映画『地球を守れ!』をリメイクした作品です。

ジャンルとしてはサスペンス寄り。でも、いわゆる分かりやすいドキドキ系とはちょっと違う。

静かなのに緊張感があって、どこか不穏。画面の構図や色づかいがとにかく美しくて、「ああ、ヨルゴス作品だな」とすぐに分かる空気感があります。

派手な展開を楽しむというより、じわじわと世界観に浸っていくタイプの映画。物語を “追う” というより、“体験する” 一本と言ったほうが近いかもしれません。

あらすじ(ネタバレなし)

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世界的な製薬会社のCEO・ミシェル(エマ・ストーン)。成功者として知られる彼女が、ある日突然、誘拐される

連れ去ったのは、どこか不穏な雰囲気をまとった男・テディ(ジェシー・プレモンス)と、その従弟ドン(エイダン・デルビス)

テディは本気で信じている。
ミシェルは地球を侵略しに来た宇宙人だと。

監禁されたのは地下室。
密室のなかで始まるのは、怒鳴り合いというより、じわじわと神経を削るような対話だ。

宇宙人だと決めつける男。
それを冷静に受け流す女。

どちらが狂っているのか。
それとも、どちらも正気なのか。

物語はシンプルな誘拐劇のようでいて、気づけば観ているこちらまで疑心暗鬼にさせられる。

地下室という閉ざされた空間で、静かに、でも確実に緊張が積み上がっていく

物語がどこへ向かうのか。
ぜひ、スクリーンで確かめてほしい一作です。

原作『地球を守れ!』との違い

映画館で『ブゴニア』を観終わって、パンフレットを購入しました。

そこであらためて知ったのが、本作の原作が 2003年の韓国映画『地球を守れ!』だということ。

しかもこの作品、今はほとんど配信がなく、DVDはプレミア価格。なかなか簡単には観られない、ちょっと伝説的な一本のようです。

パンフレットによると、物語の流れ自体は大きくは変わらないとのこと。
ただ、設定にはいくつか違いがあります。

『ブゴニア』では、エマ・ストーンが演じるのは大企業のCEO。原作では、その役どころは壮年の男性だったそうです。

さらに共犯者の立場も違っていて、原作では主犯の “恋人” の女性が関わっているとのこと。

性別が変わったことで、少し今の時代らしい空気も感じますが、パンフレットを読んでいて印象に残ったのは、それ以上に “作り手の個性” の違いでした。

『地球を守れ!』を手がけたチャン・ジュナン監督版は、感情の振れ幅がとても大きく、ブラックユーモアと暴力が一気に押し寄せるような作風だそうです。

怖いのに、どこか笑ってしまう。
残酷なのに、人間臭さもある。

それに対して、『ブゴニア』を撮ったヨルゴス・ランティモス版は、もっと静かで、もっと冷ややか

感情を爆発させるというより、
じわじわと観る側に問いを投げかけてくる。

同じ物語でも、こんなにも空気が変わるんだな、と感じました。

いつか原作もちゃんと観て、あらためて比べてみたい。そんな楽しみも残してくれる作品です。

Amio

実はこの監督、『地球を守れ!』でモスクワ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞された実力派なんですよね。

ヨルゴス・ランティモス監督ってどんな人?

出典:(C)XXIV All rights reserved / 『籠の中の乙女』

ヨルゴス・ランティモスは、ギリシャ・アテネ出身の映画監督。

ひと言でいうと、かなり独創的。

独特すぎる世界観と、ちょっと不穏でブラックユーモアの効いた作風が特徴。
これが不思議とクセになるんですよね。

決して万人受けするタイプではないけれど、不思議と心に引っかかる作品を撮る人です。
アテネの映画学校で映像演出を学び、2005年に長編デビュー。

2009年の『籠の中の乙女』で一気に世界の注目を集めました。

彼の映画は、“普通” や “常識” をそっと揺さぶってきます。

代表作はこちら

  • ロブスター(2016)
  • 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2018)
  • 女王陛下のお気に入り(2019)
  • 哀れなるものたち(2024)
  • 憐れみの3章(2024)

特に『女王陛下のお気に入り』や『哀れなるものたち』で一気に知名度が上がりました。

「え、こんな撮り方するの?」
「このセリフ回し、独特すぎない?」

って思うんだけど、見終わったあと、妙に心に残る。そんな小さな違和感を置いていくのが、ランティモス作品の魅力です。

Amio

ちなみに、私の一番のお気に入りはロブスター
恋人ができないと動物にされる世界。設定だけでクセ強い(笑)。でも、シュールで静かで、ちょっと切ない。ゾワっとするのに笑ってしまう。そういう映画、たまらなく好きなんですよね〜 ♪

ランティモス作品のここがすごい

  • 会話があえて “棒読みっぽい”
  • 人間の欲やエゴをえぐる
  • 美術と衣装がとにかくアート
  • 不穏なのに、どこかユーモラス

私は最初ちょっと戸惑いました(笑)

でも2作目、3作目と観るうちに、
「あ、この違和感がクセになるんだ…」って気づくんですよね。

だから『ブゴニア』にも期待しちゃう

ランティモス監督って、
普通の物語を “普通に” 撮らない人

だからこそ、『ブゴニア』もきっとただの ○○映画では終わらないはず。

ちょっと怖い。
でも、観てみたくなる。

そんな監督なんだと思います。

映画好きの正直レビュー(ネタバレなし)

出典:(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

まず思ったのは、「やっぱり映像がすごい」。

画面の構図、光の入り方、余白の取り方。
どのシーンもどこか計算されていて、冷たくて、美しい。

さすがヨルゴス・ランティモス、と思わずにはいられなかった。

地下室がメインの物語なのに、空間が単調にならない
建築物の質感や、閉ざされた場所の “圧” まできちんと画として成立している。

衣装も印象的だった。
派手ではないのに、その人物の立場や温度をきちんと語っている感じがする。

そして、伏線の置き方がとても上手い。
声高に主張するのではなく、さりげなく置いておいて、あとから「あ、あれはそういうことか」と気づかせる。

観ているあいだずっと、無意識に張り詰めていた理由はそこかもしれない。
俳優陣も本当に素晴らしかった。

エマ・ストーンは、静かなのに目が強い
言葉よりも視線で物語を動かしている瞬間が何度もあった。

そしてテディを演じたジェシー・プレモンス
本気で信じている人の怖さを、怒鳴らずに見せる。
あの静かな狂気は忘れにくい。

音楽の使い方も、やっぱりランティモスらしい。

特に印象に残っているのは、タイトルがスクリーンに現れる瞬間。
あのタイミングと音の重なり方。
「うまいなぁ」と、素直に感心してしまった。
(『憐れみの3章』を思い出すようなあの感じ!)

そして、エンドロール。
あのデザイン性のあるビジュアルもとても好きな感じ。
最後まで作品の世界観が崩れない。むしろ、余韻をもう一段深くしてくれる。

派手なアクションがあるわけではない。
でも、終始どこか落ち着かない。ずっとドキドキしていたような

観終わったあと、「疲れた」と同時に「映画館で観てよかった」と思った。

この緊張感と映像の強さは、やっぱりスクリーンで味わいたい。

静かなのに強い。
派手じゃないのに、じわじわ残る。

そんな一本でした。

題名「ブゴニア」の意味とは?

出典:(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

正直、最初はブゴニアって何?と思った。
花の名前? それとも造語?

でも調べてみると、全然ロマンチックじゃなかった(笑)。

「ブゴニア(Bugonia)」とは、
雄牛の死骸からミツバチが生まれると信じられていた、ギリシャ・ローマ神話に由来する自然発生説のこと。

今なら「そんなわけないでしょ」と思う。
でも当時は、それが “本気で” 信じられていた。

目に見えないものを、人は自分なりの理屈で説明しようとする。わからないものには、わかりやすい物語を与えてしまう。

これって、テディの姿とどこか重なる。

ミシェルを宇宙人だと信じて疑わない彼。
周囲から見れば荒唐無稽でも、本人にとっては揺るがない確信だ。

腐敗から蜂が生まれると信じた昔の人たち。
陰謀を信じる現代の男。

時代は違っても、「信じたいものを信じる」という構造は、案外変わらないのかもしれない。

さらに興味深いのは、本作『ブゴニア』でテディが養蜂を営んでいるという設定。蜂という存在は、いまや環境問題とも切り離せない象徴でもある。

腐敗と再生。
破壊と生命。
妄想と信念。

そう考えると、『ブゴニア』というタイトルは、
ただ不思議な響きなだけじゃなく、この物語の奥にあるテーマを静かに示している気がしてくる。

派手ではないけれど、じわっと効いてくるタイトル。観終わったあとに、もう一度この言葉を思い出したくなるような。

第98回 アカデミー賞 ノミネート部門

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『ブゴニア』は、第98回アカデミー賞で計4部門にノミネートされています。

ノミネート部門はこちら

  • 作品賞
  • 主演女優賞(エマ・ストーン)
  • 脚色賞
  • 作曲賞

作品全体の完成度はもちろん、脚本と音楽が評価されているのも納得。

とくに作曲賞ノミネートは、あのタイトルが出る瞬間の音楽を思い出すと、個人的にもとても印象的でした。

受賞の行方も含めて、今年のアカデミー賞から目が離せません。

まとめ

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『ブゴニア』は、派手さで圧倒する映画ではないけれど、気づけばずっと心をつかまれているような一本でした。映像の美しさ、建築や衣装の細やかさ、さりげなく置かれた伏線。

観ているあいだは終始どこか落ち着かなくて、でも目が離せない。静かなのに、ちゃんとスリリング。

そしてラスト。
これ以上は言えないけれど、「ああ、ここまで計算されていたのか」と思わされる瞬間があります。

エンディング映像のこだわりも含めて、最後の最後まで抜かりない。観終わったあと、すぐに言葉にできない余韻が残る映画でした。

アカデミー賞の結果も楽しみですが、それとは別に、映画館で体験できてよかったと思える作品

気になる方は、ぜひスクリーンで。
あの空気感を、体感してみてください。

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