日本映画『国宝』が、2026年の第98回アカデミー賞にノミネートされました。このニュースを見て、「外国映画賞(国際長編映画賞)かな?」と思った人も多いかもしれません。正直、私も最初はそう感じました。
ところが実際に評価されたのは、いわゆる主要部門ではなく、メイクアップ&ヘアスタイリング賞。一見すると少し意外ですが、調べてみると、このノミネートがかなり意味のあるものだとわかってきます。
歌舞伎という日本独自の文化を、映画としてどう表現するのか。その “見た目” を支える技術が、世界最高峰の舞台で評価された。そう考えると、今回のノミネートは日本映画にとって大きな快挙と言えそうです。
この記事では、映画ファンの一人として、『国宝』がどの部門で、なぜ評価されたのか、そしてこのノミネートが持つ意味を、できるだけわかりやすくまとめていきます。
『国宝』がアカデミー賞ノミネート!まずは何が起きたのか
2026年の第98回アカデミー賞のノミネートが発表され、日本映画『国宝』がメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。アカデミー賞といえば、作品賞や主演賞といった主要部門が注目されがちですが、今回は技術部門での評価となります。
『国宝』は、李相日監督が歌舞伎の世界を題材に描いた作品。役者の演技だけでなく、メイクやかつら、衣装といった視覚的な要素が、物語や人物像と深く結びついているのが特徴です。
なお、今回のノミネートは、いわゆる国際長編映画賞(外国映画賞)ではありません。その点に少し意外さを感じた人もいるかもしれませんが、アカデミー賞が『国宝』を「作品そのもの」ではなく、映画を支える技術の完成度に注目した結果だと考えると、見え方も変わってきます。
まずは、「どの部門で、どう評価されたのか」。ここを押さえておくと、今回のノミネートの意味がよりクリアになってきます。
『国宝』が評価された注目部門|メイクアップ&ヘアスタイリング賞

『国宝』がノミネートされたメイクアップ&ヘアスタイリング賞は、俳優の顔立ちを美しく整えるだけでなく、人物像や時代背景をどこまでリアルに作り込めているかが問われる部門です。
一見すると目立ちにくい賞ですが、映画を観ている側が「この世界は本当に存在している」と自然に信じられるかどうかは、実はこの部門の仕事に大きく左右されています。
『国宝』の場合、その土台になっているのが歌舞伎という日本独自の伝統文化。舞台特有の誇張された化粧やかつらを、映画としてどう成立させるのか。
やりすぎれば不自然になり、抑えすぎれば魅力が薄れてしまう。その絶妙なバランスが、作品全体の説得力につながっていました。
派手さはないけれど、映画の完成度を根本から支える技術。アカデミー賞が『国宝』をこの部門で評価したのは、そうした「見えにくいけれど確かな仕事」に目を向けた結果だと言えそうです。
同じ部門に名を連ねた、日本人スタッフの存在
2026年の第98回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞には、李相日監督の『国宝』のほか、カズ・ヒロ氏がメイクを手がけた『スマッシング・マシーン』、さらに『フランケンシュタイン』『罪人たち』『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』の、計5作品がノミネートされました。
注目したいのは、この中に日本人スタッフが関わる作品が複数含まれているという点です。『国宝』に加え、ハリウッドでも高く評価されてきたカズ・ヒロ氏の作品が、同じ部門に並んでいるという事実は、かなり胸にくるものがあります。
どちらが上か、という話ではありません。アカデミー賞という世界最高峰の舞台で、日本のメイク・ヘアスタイリングの技術が、特別扱いではなく、ごく自然に「並んで評価されている」。その状況自体が、今回のノミネートの大きな意味だと感じます。
俳優や監督ほど表に出ることはなくても、作品の世界観を支えてきた日本人スタッフの仕事が、確かな形で世界に届いている。そう考えると、この部門でのノミネートは、日本映画にとっても静かな、けれど確かな快挙と言えそうです。
なぜこの部門で『国宝』が評価されたのか

『国宝』がメイクアップ&ヘアスタイリング賞で評価された理由を考えると、まず思い浮かぶのは、歌舞伎という題材そのものの難しさです。
歌舞伎のメイクやかつらは、本来は舞台で映えるように作られたもの。それを映画という、アップも多く、細部まで見えてしまう表現の中でどう成立させるかは、決して簡単な作業ではありません。
『国宝』では、いかにも「様式美です」と主張するのではなく、登場人物の人生や感情が自然ににじみ出るような造形が選ばれていました。メイクやかつらが目立ちすぎず、でも確実に人物像を支えている。そのバランス感覚が、作品全体のリアリティにつながっていたように思います。
また、時代や立場、心情の変化が、衣装や髪型、顔つきの印象によって静かに語られていく点も印象的でした。説明的なセリフがなくても、「この人物はいま、こういう場所にいる」と伝わる。それはまさに、メイクアップ&ヘアスタイリングという仕事の力です。
派手さはなくても、物語の説得力を根っこから支えている。アカデミー賞が『国宝』をこの部門で評価したのは、そうした映画としての完成度の高さを、技術の側面から正当に見ていた結果だと言えるでしょう。
主要部門はどうだった?|今回のノミネートを整理
『国宝』のアカデミー賞ノミネートというニュースを見て、「作品賞や外国映画賞(国際長編映画賞)じゃないの?」そう感じた人も、正直多かったと思います。
実際、日本映画がアカデミー賞で話題になるとき、どうしても注目が集まりやすいのはそのあたりの部門ですよね。
ただ今回の『国宝』は、いわゆる “わかりやすい賞レースの主役” ではなく、技術部門でしっかり評価されたという点が大きな特徴でした。
これは決して控えめな結果ではなく、アメリカの映画業界が『国宝』を「文化的に珍しい作品」ではなく
「一本の映画として完成度が高い作品」として見ていた証とも言えます。
派手な部門に名前がなくても、映画を映画として成立させるために欠かせない部分が評価される。それは、作品の “底力” が伝わったからこそのノミネートだと感じました。
年齢を重ねて映画を観るようになると、こうした賞の意味が、以前より少し違って見えてくるもの。
数字や肩書きよりも、「どこを見て評価されたのか」に目を向けると、『国宝』のノミネートは、かなり誇らしい出来事だったと思います。
このノミネートが持つ意味|日本映画にとっての快挙
『国宝』のアカデミー賞ノミネートは、「日本映画が世界で評価された」という一言では片づけられない出来事でした。
外国映画賞(国際長編映画賞)ではなく、メイクアップ&ヘアスタイリング賞という技術部門で名前が挙がったこと。それは、日本文化の “珍しさ” ではなく、映画としての作り込みそのものが見られていた証です。
さらに注目したいのは、同じ部門に日本人メイクアップアーティスト、カズ・ヒロ氏が関わった作品もノミネートされていること。立場も作品も違うけれど、日本人の技術が、それぞれの場所で世界基準に届いている。そう思うと、静かだけど確かな誇らしさがあります。
大きな話題になりにくい部門かもしれません。でも、映画を長く観てきたからこそ、「ここを評価されたのはすごい」と感じられる。『国宝』のノミネートは、そんな大人の映画ファンにこそ響く快挙だったのではないでしょうか。
Amioカズ・ヒロ氏は、2018年『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で日本人初のアカデミー賞〈メイクアップ&ヘアスタイリング賞〉受賞者。今回のノミネートは、その流れが続いている証とも言えそう。
まとめ|外国映画賞じゃなくても、これは間違いなくすごい
外国映画賞(国際長編映画賞)じゃなかったの?そう思った人、たぶん少なくないと思います。正直、私もそのひとりでした。
でも今回の『国宝』は、日本映画だから評価された、というより、一本の映画として、技術の部分をちゃんと見てもらえた作品でした。
派手な賞ではないけれど、映画を支えている大事なところが、世界で認められたという事実。これはやっぱり、素直にすごい。
どの部門か、よりも、「どこを見て評価されたのか」。そこに目を向けると、今回のノミネートの意味が、ちょっと違って見えてくる気がします。

